Q1152 落石防護柵の高さ

  落石対策便覧(H12.6) P151では、落石防止柵の高さは,斜面勾配および背面平場からの高さと跳躍高により柵高を決定するようになっておりましたが,道路土工-切土工・斜面安定工指針(H21年度版)P357では,柵高の1/3は余裕高として確保するように明記されております。どちらを採用するのが望ましいのでしょうか。
 これまで、背面の平場幅をH=2.0mの跳躍高が確保するまで切り込み,落石防止柵を設置するようにしておりましたが、余裕高については石径の1/2程度が確保していれば良いという考え方で今まで設計しておりました。
 お手数をおかけしますが、右城先生のお考え方をご教授いただけますでしょうか。

回答

 道路土工指針は,落石対策便覧の上位基準として位置づけられます。道路土工−切土工・斜面安定工指針が改訂され,H21年度版が出版されましたので,今後はこの指針に準拠しなければなりません。

 落石対策便覧も土工指針と整合するように改訂されなければならないのですが,現在のところその見通しは立っていないようです。
 道路土工−切土工・斜面安定工指針に記載されていない事項については落石対策便覧に準拠せざるを得ないと思いますが,地盤工学会四国支部から発行している「落石対策Q&A」を参考にされることをお勧めいたします。


Q1151 もたれ式擁壁の転倒に対する安定性の評価

 下図に示す高さ1mのもたれ式擁壁の安定計算を当社が所有しているソフトを用いて安定計算を行ったところ,転倒に対して載荷重q=3kN/m2を載荷させるとOKになるのですが,載荷しなければOUTという不合理な結果となりました。
不合理な結果が得られる原因についてお教えください。


回答
 計算書を見ると,載荷重あり,なしのいずれのケースも,荷重の合力の偏心量eが負の値を示しています。合力が底面中心よりも後方にあることになります。載荷重ありの方が主働土圧が大きいため,偏心量の絶対値が小さくなってB/6となり,OKという結果が出ていますが,載荷重がないケースでは土圧が小さいため荷重の合力が底面中心から後方へ大きく離れているためOUTという結果になっています。

 合力が底面中心から後方へ偏心するということは,擁壁が後方へ回転することですが,擁壁の背後には盛土があるので盛土によって支えられます。つまり,壁背面にも地盤反力が発生するはずです。土圧が主働土圧より大きくなると考えることもできます。いずれにしろ,御社が使用している擁壁計算ソフトではそれが考慮されていません。このため,実際にはあり得ない不合理な計算結果となっています。

 転倒の安定性を荷重の偏心量で評価できるのは,逆T形擁壁や重力式擁壁のような自立式擁壁の場合です。もたれ式擁壁の場合,B/6として計算するときのBは壁の下面幅ではなく,下図に示すように壁面も含めて水平面に投影させた擁壁全幅を採用するべきと思います。
 このように考えれば,B=0.35+1.0×0.3=0.65mです。
 偏心量は
    載荷重あり e=(0.65-0.35)/2-0.054=0.096m<B/6=0.108m OK
    載荷重なし e=(0.65-0.35)/2-0.077=0.073m<B/6=0.108m OK
 となります。


 転倒の安定性を安全率(=抵抗モーメント/転倒モーメント)で評価する手法もあります。
   載荷重あり Fs=Mx/My=2.68/0.8=3.35 > 1.5   OK
   載荷重なし Fs=Mx/My=2.66/0.61=4.36 > 1.5  OK
となります。
 転倒に対して十分安全と評価すべきです。


Q1150 ボックスカルバートの支持力計算

 ボックスカルバートを軟弱地盤で施工する場合,地盤支持力は道路橋示方書と建築基礎構造計算式のどちらを使った方がよいでしょうか。二つの式で求めた支持力の値は、近い値になるのでしょうか。Dfは、どのようにとればよいでしょうか。

回答
 ボックスカルバートについては,「道路土工−カルバート工指針」(平成22年版)の解図3-3基礎地盤対策選定フローの例(p39)を参考にすれば良いと思います。
 道路橋示方書や建築基礎構造の支持力式は,荷重の偏心傾斜や根入れ効果,基礎の寸法効果など考え方に若干の差異はありますが,基本的には地盤を剛塑性体と見なしたテルツァギーの支持力式を拡張したものです。地盤の変形が問題になるような軟弱地盤には適用できません。
 ボックスカルバートの支持力についてはQ1029をご覧になって下さい。
http://www.daiichi-c.co.jp/authors/ushiro/Ancer/Q1029.htm#Q1047

Q1149 たて壁が地表面から飛び出している逆T型擁壁の計算法

「誰にでも簡単にできるExcelによる擁壁設計」について教えて下さい。
逆T型擁壁1、2の設計をするとき、下図のように地盤から立ち上がっている壁を考慮する場合、逆T型擁壁のソフトの中にあるワークシート欄の
2.荷重 (1)自重の表の壁体Aの欄に重量を手入力して計算することは可能なのでしょうか。

回答

拙著「誰にでも簡単にできるExcelによる擁壁設計」の計算書は下図のようになっていまいす。したがって,地表面から上に飛び出しているたて壁の重量をAの加算して計算することができます。


Q1148 逆L型擁壁の底版の厚さ

 逆L型擁壁の滑動に対する検討において、つま先版上の土砂重量や受働土圧を見込めない場合、つま先版を非常に長くしなければ安定しません。このような場合、底版を剛体とみなせる厚さにする必要があるでしょうか。

回答
 結論から言えば,底版を剛体と見なせるかどうかを意識する必要はないと思います。底版の厚さに関わらず通常の方法で設計計算をすれば良いと思います。
 通常の方法とは,下図の(a)のように地盤反力を算定するときには擁壁を剛体,地盤を離散型のばねと仮定しています。剛体とは曲げ剛性EIが無限大ということです。この場合の地盤反力度は台形分布または三角形分布となります。その地盤反力と用いて部材の断面力(曲げモーメント,せん断力)を求め,部材の応力度を照査します。このときには,部材を構成するコンクリートも鉄筋も弾性体と仮定しています。もしも,部材が薄すぎると鉄筋を入れてもコンクリートの圧縮応力度やせん断応力度が許容値を超過することになります。
 底版やたて壁の曲げ剛性を考慮して解析するのであれは,下図の(b)のように部材をフレームにモデル化して解析することができます。底版はたわむため,底面の地盤反力は台形や三角形にはなりません。曲線分布になります。
 (a)のように仮定して計算した方が,底版の応力度については安全側になります。


Q1147 地盤係数法における回転角について

 御著書,「擁壁設計のQ&A」(理工図書、平成10年8月31日,4版発行版)に記述されているQ.41,pp.136-142に関しての質問です。
 p.137の1行目,ただし,回転角αは微小であるため,sin α≒α,cos α≒1とします。2行目に,式(3.37) ・・・・・・・ δu=uo+y・α,δv=vo+x・α と説明されています。こ れ
質問(1)  sin α≒α,cos α≒1のα角は具体的にはどこの角度を表しているのでしょうか.tan α≒αは式(3.37)にも適用されているのですが。
質問(2) 例えば,αが10°傾いた場合,回転角αは微小である場合とは限らないと思いますが,幾何学的にどうなるのでしょうか。

回答

質問(1)について
 αは、図3.25に示しているように、水平面からの基礎の回転角です。

質問(2)について
αの単位は度ではなく、ラジアンですので注意して下さい。
α=10゜をラジアンに直すとα=10×π/180=0.174532925 rad
α(度)とsinα、cosα、tanαの関係は下図ののようになります。

α=10゜=0.174532925 radの場合
sinα= 0.173648178
tanα=0.176326981
cosα=0.984807753

α/sinα= 1.005095058
α/tanα=0.989825406
1/cosα= 1.015426612

となります。α=10゜の場合、sinα≒α,cos α≒1、tan α≒αと見なすと、0.5%〜1.5%の誤差を生じることになります。αが10度未満であれば微小と見なしても問題ないと思います。

 
地盤係数法(道路橋示方書下部構造編では変位法と呼んでいます)では、地盤を離散型のバネ(ウインクラーバネとも呼ばれる)と仮定しています。 地盤反力を基礎の変位に比例すると見なせるのは、基礎の変位が微小の場合に限られます。地盤反力度を算定する上で便宜的に地盤をバネと仮定しているので あって、本来地盤係数法は、基礎の変位や地盤の変形を算定することを目的としたものではありません。
 基礎の変位や地盤の変形が工学的に問題となるような場合には、有限要素法や個別要素法など変形を目的とした解析手法を用いるべきです。

Q1146 集水桝の設計に用いる土圧

 先生に以前U型側溝にかかる土圧は、「主働土圧」なのか「静止土圧」なのかをお聞きしました。その際は、「理論的には静止土圧と主働土圧の中間的な土圧を採用すべきですが,一般的には主働土圧が用いられています。」とのことでした。
 こちらでは現在、市道(幅員4.0m)の内に農業用水路を設置する計画があり、600×600のボックスカルバートの設置を検討しています。ボックスの中間地点毎に維持管理用の集水桝(B900×W900×H2500)を設置する予定です。
 集水桝に作用する土圧はU型側溝にかかる土圧と同じに考えてよいのでしょうか。 無筋構造物で設計する場合、作用する土圧を「主働土圧」とした場合は許容応力度を超えないのですが、「静止土圧」とした場合は超えてしまい、鉄筋構造物にする必要があります。

回答

 U型側溝は、KA=0.3程度の土圧係数を用いた主働土圧で、集水桝はKo=0.5の土圧係数を用いた静止土圧で設計が一般的に行われています。
 この理論的根拠があるのではなく、経験工学的な判断で行われています。このような土圧係数を用い、適当な安全率を見込んで計算しておけば、格段問題を生じないということだと思います。
 擁壁、U型側溝、集水桝いずれでも土圧を受ける壁が動かなければ、壁に作用する土圧は静止土圧です。静止土圧係数には、一般にヤーキー式を用いてKo=1-sinφ=1-sin30=0.5として推定していますが、これは裏込め土の締固めを行わない正規圧密状態に対する値です。実際には、施工時にタンパーなどで裏込め土の締固めを行い過圧密状態にするので、静止土圧係数はKo=1〜6になると言われています(山口柏樹著、土質力学全改訂、技報堂出版)。


Q1145 風荷重、衝突荷重も常時荷重か

社団法人農業土木学会発行の土地改良事業計画設計基準設計「農道」基準書・技術書(平成17年3月)(以下”農道”と称します)p.528に9.1.9荷重の種類と組合わせの記載がありその中で、風荷重や衝突荷重は、表-9.1.11荷重の組合わせの常時に付加して設計するものとあります。
風荷重及び衝突荷重を考慮する際は、安定計算及び部材計算ともに活荷重(上載荷重)を考慮した常時で設計べきなのでしょうか。
なお、風荷重及び衝突荷重は、道路土工−擁壁工指針と同じものが示されています。

回答

 擁壁工指針(平成11年)では、設計における荷重の組み合わせとして、下記の3ケースが示されています。
@自重+載荷重+土圧
A自重+土圧
B自重+地震の影響
風荷重や衝突荷重を考慮する場合には、Aの組み合わせに付加して設計することになっています。
つまり、活荷重は作用させないことになっています。下記のような理由によるものと思われます。
(1)異常時の風速を採用している。
風荷重には、下記の式で求めた値が採用されています。
p=1/2×ρ×Ud^2×Cd×G=1/2×0.00123×40^2×1.2×1.9=2kN/m2
設計基準風速にはUd=40m/sが採用されています。この考え方は、道路橋示方書に準拠したものと思われます。
このような強風の際に自動車が通行していることは考えられません。
(2)衝突荷重は瞬間的
衝突荷重は瞬間的に作用する動的荷重ですが、擁壁工指針では、支柱の降伏荷重を衝突荷重とし、これが静的に作用するものとしてます。非常に過大な設計となっています。このことから、活荷重と同時載荷は必要ないと判断されているのだと考えられます。

土地改良事業計画設計基準設計で用いられている風荷重や衝突荷重は、擁壁工指針の値と同じですので、同時に活荷重を載荷させる必要はないと思います。活荷重と風荷重を同時に作用させるのであれば、道路橋示方書のように、風荷重は1/2にすべきでしょう。


Q1144配力筋量とポアソン比の関係

右城さんのネットで公開されています「鉄筋コンクリート構造物設計・施工の留意点」についての質問です。
P8において、「圧縮鉄筋量=引張側主鉄筋×1/6 ←コンクリーとのポアソン比」となっています。
コンクリートのポアソン比は0.2(1/5)ですが、配力筋については、通常ポアソン比の1/5〜1/7の中間をとって、1/6としていると思われます。
ポアソン比を応力分散と考えて、配力筋の鉄筋量としていると考えられますが、なぜ1/6なのか、1/7でだめなのか、及び1/5としないのかについて、理由、及び根拠等を教えてもらえないですか。(各種文献でも、配力筋は主筋の1/6としか、書かれておらず、その理由が明記されていません。)
また、初歩的な質問ですが、ポアソン比を配力筋の考え方について摘要する書籍等がありましたら、教えて頂けないでしょうか。

回答
 私は,配筋に関しては全くの門外漢なので,私の考えを述べることはできませんので,道路橋示方書・同解説U鋼橋編(平成14年3月)に書かれている内容を紹介させていただきます。参考にして下さい。
 8章床版において,床版の設計曲げモーメントの解説として,下記の内容が書かれています。
「・・・一方向版において死荷重による配力鉄筋方向の曲げモーメントは主鉄筋方向の曲げモーメントのポアソン比分(鉄筋コンクリートでは1/6倍)しか生じないことから,配力鉄筋方向については,・・・・」(p243)。

Q1143橋台パラペットのT荷重による曲げモーメントとせん断力

 道路橋示方書では、T荷重によりパラペットに発生する曲げモーメントMp、せん断力Spの算定式として、一般式と近似式の2通りが示されていますが、パラペット高h=1.80mの場合について両者で計算すると、下記のように値が大きく異なります。なぜでしょうか。

回答

 3つの問題点がありますので、順番に説明します。

【問題点その1】 一般式のlogを常用対数と見なして計算している

 一般式のlogは常用対数でしなく自然対数です。電卓では一般に10を底とする常用対数をlogと表記し,自然数eを底とする自然対数にはlnが使用されています。電卓のlog関数を用いて計算すると間違った値となります。ln関数で計算すべきです。そうすれば、下記のようになります。これが正解です。

【問題点その2】近似式に、重力単位のときの式が用いられている

 使用されている道路橋示方書Wは、平成14年3月に発刊されたものと思われます。平成8年版までの示方書には重力単位が用いられていたのですが、平成14年版からSI単位に変わっているのですが、パラペットの近似式については修正することが見落とされていたのだと思います。日本道路協会のHPに正誤表が掲載されており、13.03が130.3に訂正されています。130.3として計算すると下記のようになります。



【問題点その3】 一般式と近似式の値が一致するのはh=1mのときだけ
 近似式は、一般式でh=1.0mとして誘導されています。このため、h=1.0mのときはMpもSpも一般式の値と一致しますが、それ以外では下図のようになります。
 近似式が使用できるのはパラペット高がh=1m付近あるときだけです。通常は、一般式を用いるのが良いと思います。


一般式、近似式の誘導⇒こちら

Q1142 重力式擁壁にガードレールを設置するときの計算法

 新・擁壁設計法と計算例のp.36-37、続・擁壁の設計法と計算例のpp.255-260、あるいは、エクセルによる擁壁設計改訂版のpp.61-等々拝読させていただきながら理解に努めております。次の点についてご指導下さい。

質問1
 擁壁の端部の断面照査法について、擁壁工指針の設計法が解説されております。端面から1m控えた位置から下方へ45度の角度をもって自動車衝突荷重は分散し、その着目する断面位置における部材照査に関する質問です。
 この場合の自動車衝突荷重は,例えば,B種ですと水平方向に30KNで路面位置から0.6mの高さに集中して作用すると仮定した場合の手法も、解説の主旨に対応するものでしょうか。

質問2
 新・擁壁設計法と計算例の解説では、たて壁天端から下方の任意位置での単位幅当たりの断面力の算定式が与えられております。またこの場合の衝突荷重が表2.7に載っています。この荷重は部材力算定のための図2.13(a)の構造に適用する荷重でしょうか。式(2.17)の安定解析にも単位長さ当たりの荷重にも影響を与えます。いったい,この荷重はどのようにして導かれた値でしょうか。

質問3
 自動車衝突荷重を重力式擁壁に作用させると、ガードレール支柱部埋め込み部のコンクリートせん断補強筋の他に、擁壁端面の上部付近にはさらなる主鉄筋としての補強筋が、ほとんどの重力式擁壁に必要になってきます。これは大変な設計法となります。なお、,続・擁壁の設計法と計算例の図7.4.5について説明がなされておりません。以上宜しくお願いいたします。

回答

質問1について
 ご質問の内容から、ご購入いただいている拙著は、初版の新・擁壁設計法と計算例と思われます。
 新・擁壁設計法と計算例の中の「2.8.1自動車による衝突荷重」の内容は、擁壁工指針に準拠しています。
 新・擁壁の設計法と計算例の初版は,擁壁工指針の改訂を待たずに「擁壁工指針の改訂原案」の内容のままで平成10年12月に発刊しました。この結果,平成11年3月発行の道路土工−擁壁工指針と整合しない箇所がありました。
 初版の訂正箇所はHP上で公開しています。⇒訂正箇所 なお、第2版からは訂正してあります。

質問2について 
 ご質問の内容から察すると、「2.8.1自動車による衝突荷重」は下記の初版になっていると思われます。これは、擁壁工指針の改訂版(H11年)がでる前の「擁壁工指針の改訂原案」の内容です。
 第2版は、擁壁工指針(H11年)に準拠した内容になっています。
 支柱式防護柵、つまりガードレールの衝突荷重の値は、コンクリートに「埋め込み深さ400mmの砂詰め固定」で設置する支柱の最大支持力の値です。車両用防護柵標準仕様・同解説(日本道路協会、平成16年、p109)に示されています。支柱の最大支持力とは、支柱の静的載荷試験を行ったときの降伏荷重と思われます。
 筆者らがA種ガードレール支柱を用いて載荷試験を行った結果によると、降伏荷重は約60kNでした。試験が「砂詰め固定」ではなく「モルタル固定」で行ったため、50kNではなく60kNになったものと考えられます。

【新・擁壁設計法と計算例の初版】


【新・擁壁設計法と計算例の第2版】


【A種ガードレール支柱の静的載荷試験】


質問3について
 ご指摘の通りです。計算法についてはQ1140をご覧になって下さい。
 B種ガードレールを設置した場合、擁壁天端位置(z=0m)ではM=30kN×0.6m=18kN・m=18,000,000N・mmの曲げモーメントが発生します。擁壁天端位置での有効幅はλ=1.0+0=1.0m=1,000mmとなります。天端の厚さをb(mm)とすると、断面係数はZ=λb^2/6=1,000×b^2/6=166.7b^2(mm3)です。曲げ引張応力度は、σ=M/Z=18,000,000/(166.7b^2)=108,000/b^2(N/mm2)です。
 衝突時のコンクリートの許容引張応力度は、コンクリートの設計基準強度を18N/mm2とすると、σta=18/80×1.5=0.34N/mm2です。したがって、許容応力度が無筋コンクリートでも安全となるためには、擁壁の天端幅がb=(108,000/0.34)^0.5=570mm以上必要ということになります。これより薄い場合には、補強鉄筋が必要ということになります。

Q1141 笠コンクリートに緩衝ゴムを敷くと荷重は伝達しないか

EPS軽量盛土工法わ計画しています。下図に示すように笠コンクリートの上に緩衝ゴムを設置してガードレール基礎を載せれば、基礎からの荷重を笠コンクリートに作用させる必要はないでしょうか。

回答

 ガードレール基礎が衝突荷重を受けて変位をしても笠コンクリートに当たらないだけ空間が確保されていれば、荷重は笠コンクリートに伝達されることはありません。しかしながら、基礎コンクリートの間に緩衝ゴムを挟んでいるのであれば荷重は伝達されます。
 ガードレールに衝突荷重が作用すると、基礎は図1(a)のように剛体的に変位をします。通常の安定計算では地盤反力を算定するのに、地盤を離散型のばねとしてモデル化し、地盤反力qは鉛直変位δに比例するものと見なします。基礎底面が地盤だけの場合、地盤反力は図1(b)のように算定することになっています。
 基礎底面のつま先部に緩衝ゴムがある場合の地盤反力は、図1(c)のようになります。緩衝ゴムの剛性が地盤より小さいと、発生する地盤反力も小さくなりますが、ゼロにはなりません。
 ちなみに、テールアルメ補強土壁工法では、地盤反力をゴムの影響を無視し、図1(b)のように算定しています。


図1 基礎の変位と鉛直地盤反力

Q1140 重力式擁壁にガードレールを設置するときの補強鉄筋

重力式擁壁にガードレールを設置する場合、応力計算から配筋を検討してますが、それとは別に以前から支柱の回りに補強鉄筋を設置していたのですが、これは必要でしょうか。ご意見をお聞かせ下さい。


回答

1.ガードレール基礎の破壊形態
 車両がガードレールに衝突した場合の基礎の破壊形態として、図1に示すように押し抜きせん断破壊、断面方向の曲げ破壊、縦断方向の曲げ破壊が考えられます。
 ご質問の左の図の鉄筋は断面方向の曲げ破壊に対する引張鉄筋です。中央と右端の図面の鉄筋は押し抜き破壊に対する補強鉄筋です。コンクリートのみで押し抜きせん断応力度が許容応力度以下であれば補強鉄筋は不要です。

2.押し抜きせん断破壊に対する検討
 押し抜きせん断破壊に対する検討手法は、防護柵の設置基準・同解説(H10.11)に示されており、それに基づいて算定されたせん断補強鉄筋の配筋例が車両用防護柵標準仕様に掲載されています。せん断補強鉄筋に関しては、車両用防護柵標準仕様の標準図面を参考にすることができます。

3.断面方向の曲げ破壊に対する検討
 断面方向の曲げ破壊に対する検討手法は、道路土工−擁壁工指針に紹介されています。
 擁壁天端から下方へzの位置の断面力、無筋コンクリートとしての応力度を擁壁工指針に準拠して算定すると次のようになります。
 
 曲げ引張応力度が許容引張応力度を超過する場合には、擁壁の天端幅を大きくするか、コンクリートの設計基準強度を大きくする必要があります。図1(b)に示しているように鉛直方向に曲げ引張補強鉄筋を入れて、鉄筋コンクリート構造として照査することも考えられます。

4.縦断方向の曲げ破壊に対する検討
 車両が衝突すると縦断方向の曲げモーメントが発生し、図1(c )のような破壊形態を生じる恐れがあります。これに対しては、例えば基礎底面における地盤の摩擦抵抗を弾性バネと見なして、弾性床上の梁として曲げモーメントを算定し、応力度の照査を行う必要があります。曲げ引張応力度が許容引張応力土を超過するようであれば図1(c )のように補強鉄筋を配置する必要があります。


Q1139 斜面の痕跡からの落石速度の推定

 日ごろから先生の著書、論文およびご講演などから、多くのことを勉強させており、まずお礼申し上げます。落石の飛び出し速度の算定方法について先生に伺いたく、メールさせていただきます。
@ 起点と着地点の相対位置(連結線の長さ、傾斜角度)からの算定方法に関する文献はあるでしょうか。
A 先生の講演資料中「国道33号吾北村大渡の事例」で、V0=12m/s は、どのように算出されたのでしょうか。
初心者のもので大変失礼ですが、ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

回答

@について
下記の論文があります。参考にして下さい。
右城 猛,筒井秀樹,加賀山肇:落石の運動特性と現行の運動予測法の問題点、第5回地盤と環境に関するシンポジウム、(社)地盤工学会四国支部徳島県地盤工学研究会、2009.
Aについて
空気抵抗を無視すれば落石の運動は放物線運動になるため、3個の条件が必要になります。大渡の例では、バウンド点(飛行開始点)の座標値(0,0)と防護柵衝突点(着地点)の座標値(8.4m,2.4m)が既知ですが、これだけでは速度を求められません。そこで、水平方向に飛び出したものと仮定しています。
そうすれば、下記のように飛び出し速度を算定することができます。

Q1138 論文「擁壁に作用する地震時主働土圧に関する考察」について

建築構造学研究室所属の学生で、土圧全般的について勉強しています。
地震時土圧に関して勉強していたところ「擁壁に作用する地震時主働土圧に関する考察」と題された右城先生の論文をホームページ上で入手し、勉強しています。
式の展開については概ね理解できたのですが、論文中の計算例で(3)擁壁に作用する土圧の項のB設計加速度におけるすべりを考慮した地震時土圧Pの値が一致しません。記載されている値は106.40kN/mですが、何度計算しても、83.11kN/mになってしまいます。ちなみに、計算条件は同節(1)を利用しました。
何度見ても、どこで間違っているのかが分からず、先生に質問させていただきました。
お忙しい中、大変ご迷惑かと存じますが、時間がありましたら間違いやすい場所等、ご教授願います。

回答

照査したところμ=0.6ではなくμ=0.8として計算していました。この論文は2002年に書いたものですが、ミスに気がつきませんでした。ご指摘いただき有り難うございます。
修正論文

Q1137 落石防護ネットの計算法

 9月24日、地盤工学会中部支部で開かれた先生のセミナーに参加させていただき有り難うございました。下記の2点についてお教え下さい。

(1)ポケット式落石防護ネットの可能吸収エネルギーについて
 落石対策便覧では、ET=EN+ER+EP+EPR+ELとなっているが、この式は間違っており、新しい道路土工-切土工・斜面安定工指針ではET=EN+ERという式のように修正されているということがセミナーで説明されたように思います。
 それを帰ってからP352〜353を中心に調べたのですがその記述が見つかりません。小生の聞き違えでしょうか、見ている箇所が違うのでしょうか。土工指針で修正されてるなら、今後の計算は修正式でやりたいと思うのですが・・・。

(2)ロープネット工
 ロープネット工は現場では転石群全体を覆い、初期移動を抑えるようにしています。ところが、計算は滑っていると仮定しています。言っている事とやっている事が矛盾しているように思われます。
これをすっきりさせる理論は無いものでしょうか。例えば、法枠工や斜面安定対策工と同様に、現状の安全率Fs=1.0としてこれにΔFs=0.2を付加するには無理があるでしょうか。

回答

(1)ポケット式落石防護ネットの可能吸収エネルギーについて
 落石対策便覧では、ET=EN+ER+EP+EPR+EL  (5-6) となっていますが、セミナーでは便覧式をET=EN+ER+ELと説明しました。支柱と吊りロープの吸収エネルギーEP+EPRは小さく無視しても影響がないためです。
 セミナーで私が示したET=EN+ERの式は、道路土工-切土工・斜面安定工指針には記述されていません。しかしながら、p353に下記の文章が書かれています。
「落石防護網の可能吸収エネルギーは、金網、ワイヤローブ、支柱及び吊りロープの可能吸収エネルギーを合算して求める」。ET=EN+ER+EP+EPRを意味しており、式(5-6)でELを加算するのは間違っていたということです。
 
(2)ロープネット工法について
 ロープネット工法は、落石対策便覧の覆式落石防護網の設計に準拠しています。
 ネットに作用する荷重は W''=(sinθ−μcos)W (5-3)で算出しています。摩擦抵抗力の不足分がネットに作用するとした考え方であり問題ないと思います。
 ただし、ロープ張力を求めるT=wl^2/(8f) の式は間違っています。 正しくは、下記の式(4.6)ようになります。

 安全率の考え方は、構造物によって統一がとれていないのが現状です。擁壁などではすべり面の安全率がFs=1.0となるような土圧、つまり主働土圧を求め、その主働土圧が荷重として擁壁に作用するものとして安定計算や部材応力度を計算しています。考え方は合理的ですが、土圧が0となる場合には擁壁に作用する荷重を0としても良いかという問題が残りすっきりしません。
 斜面対策工で、すべり面の安全率がFs=1.0+0.2=1.2となるような必要抑止力を求め、それを荷重として法枠やアンカーに作用させて計算を行っています。この場合、荷重と法枠あるいはアンカーのそれぞれに安全率を見込むことになります。安全率を二重に見込むのが合理的とは思えません。
 安全率の問題は非常に難しく、簡単に結論を述べることはできません。


Q1136 ボックスカルバートの荷重分散

 ボックスカルバートの地耐力照査において、荷重分散線の始点と根入れ(Df)についてご教授ください。
 プレキャストボックスカルバートの施工では,基礎砕石の上に基礎コンクリートを打設し,その上に製品を設置しています。地盤反力を計算する場合、下図のケースAとケースBが考えられます。どちらが正しいでしょうか。
 コンサルタントに相談すると,ケースAという意見がほとんどでした。しかし基礎コンクリートは、それなりの重量があるし、カルバートの不同沈下防止の役目もありますので、カルバート本体と一体的に考えれば、ケースBが妥当とも思えます。いかがでしょうか?
 置換の検討をする際に、荷重分散線の取り方によって置換底面の幅が微妙に違ってきます。地盤反力を計算する際にも基礎コンクリートの重量を含めるべきだと考えます。また、根入れ(Df)については、許容支持力計算で大きく影響してきます。
 初歩的で低レベルな質問で申し訳ありませんが、前々から疑問でしたので、よろしくお願いします。

回答

 基礎コンクリートを構造体と見なし,応力度に対する照査も行う場合には,ケースBとして計算することができます。具体的には,下図に示すように地盤反力によって発生するせん断力Sと曲げモーメントMに対して応力度の照査をする場合です。
 地盤が軟弱で荷重の分散幅を大きくしたいなど特殊な場合以外は,基礎コンクリートを構造体と見なすことはないと思います。一般的には,ケースAで設計しており,基礎コンクリートの強度は期待していないと思います。
 なお,置換砂の下端で地盤反力を計算する際に,基礎コンクリートの重量を考慮するかどうかという問題は,そこまで厳密に計算する意味があるかどうか工学的に判断すべきことです。ケースAとケースBで区別するという問題ではないと思います。




1135 改良試行くさび法について

 擁壁の安全性を検討することになって、久しぶりに「試行くさび法」をひも解いてみました。とりあえずは「擁壁工指針」に基づいて検討をしましたが、逆T式擁壁の仮想背面の採り方に以前から疑問を感じていましたので、ネットで検索して先生の「改良試行くさび法」に接することができました。
 ここで少し疑問に思うのですが、重力式の主働土圧がスベリ土塊による反力(R2)であるのに対して、逆T式の場合はR2(一般式によればR2+Rc)でないのがどうも納得がいかないのです。擁壁が移動(水平、回転)して静止土圧から二つのスベリ面によって発生する主働土圧に移行することを鑑みると、どうしても擁壁側のスベリ面を土塊が押す力が主働土圧のように思えるのです。また、重力式の場合、主働土圧は任意の仮想壁面の内力と一致するのでしょうか。
以上の疑問に対してご教授いただければ幸甚でございます。

回答

 私が改良試行くさび法を考案した初期に,土木学会や地盤工学会研究発表した際に,同様の質問をよく頂戴しました。
 クーロンやランキンの土圧理論を理解すると解決する問題ですが,なかなか理解していただけませんでした。
 平成21年度 徳島地盤工学会 第2回特別講演会で講演させていただいたときに配布した資料です。これを読んでいただければ理解できると思われます。
 クーロンやランキンの土圧理論では擁壁が回転することは考えていません。水平に移動した場合のみです。 

  配布資料 クーロンの土圧理論と改良試行くさび法

Q1134 土圧の算定に使用する壁面摩擦角

 土圧作用面がコンクリートの場合の壁面摩擦角は,δ=2φ/3を使用することになっています。しかし,石油系の透水マットを使用する場合,宅地防災マニュアルではδ=φ/2を採用するようになっています。石油系透水マットを使用した際に壁面摩擦角を変えなければならない理由は何でしょうか?
 擁壁の施工では石油系の透水マットを使用することがほとんどだと聞いていますが,擁壁に関する構造計算の書物の中で、透水マットに関しての記述が少なく、市販のソフトに関しましても考慮されていない方が多いのではないかと感じます。もしくは,透水マット自体がそれほど主流ではないのでしょうか?

回答
 コンクリート擁壁の背面には透水マットを使用するが一般的です。ご指摘のように宅地防災マニュアルでは透水マットを使用する場合δ=φ/2を使用することになっていますが,道路土工ー擁壁工指針では透水マットの有無に関わらずδ=2φ/3を使用しています。
 壁面摩擦角は実験に基づいた経験的な値と思います。透水マットの厚さや壁面に占める割合などによっても壁面摩擦角は異なることや,壁面摩擦角の値が土圧に及ぼす影響はあまり大きくないことから神経質に考える必要はないと思います。むしろ,擁壁の設計に用いる土圧として主働土圧で良いのか,土圧計算に用いる内部摩擦角としてφ=20〜35゜を一般に用いているが妥当なのか,土圧計算に粘着力を無視しているが妥当なのか,といったことが壁面摩擦角よりももっと大きな問題と思います。

Q1133 盛土が台形をしているときの土圧計算法

「擁壁設計Q&A-105問答-」のP39に有る式を利用させていただこうと計算していたところKAの値がかなり大きな値になってしまいました。
そこで、P41にある例題をあたったところ、KA及びPAの計算値が11.52及び60.1となり、例題の値になりませんでした。
KA=0.209 →11.52? ,PA=82.6kN/m →60.1?
私なりに何度も検算し、係数の引用も確かめましたが誤りは無いようでした。

回答
 著書が間違っていました。ご迷惑をおかけしました。下記のように訂正をお願いいたします。

Q1132 自動車衝突荷重を作用させる時の有効幅

『新・擁壁の設計法と計算例』第2版 擁壁の安定計算において,自動車の衝突荷重を考慮した照査をする際の計算ででてくる式についての質問です。
(質問1)
P37  Pu=P/L  (2.17)
P241  Pu=P・λ/L (8行目)   
とあります。
式2.17では、単純に単位長さ当たりの荷重に置き換えているだけですが、P241の式では、これに係数 λ(載荷幅) がかかります。
また、P239からの計算例では、λを2.0mと設定しているようです。この載荷幅λの意味(何の載荷幅で、どこの長さなのか)と、λ=2m とはどのようなものなのかを教えてください。

(質問2)
また、P28の図2.8の中にもλが使われていますし、P234からの計算例その2のなかでも、P237式(9.2.1)の中にもλが出てきます。これらのλと、上式 Pu=P・λ/L 中のλは別の意味のλと理解してよいのでしょうか?

回答

(質問1)について
 著書の修正ミスです。 
 「新・擁壁の設計法と計算例」の初版は,平成10年12月に出版しました。擁壁に作用させる自動車衝突荷重は,平成8年1月に公表された道路土工擁壁工指針改定原案に準拠していました。その後,平成11年3月に道路土工−擁壁工指針が発刊されました。表1に示すように,改訂原案から少し変更されていました。このため,「新・擁壁の設計法と計算例」(第2版)では,平成11年版の道路土工-擁壁工指針に準拠するように内容を修正したつもりでしたが,「9.3重力式擁壁の計算例」が修正できていませんでした。
Pu=P/Lは,原稿の道路土工−擁壁工指針に準拠しており, Pu=P・λ/Lは道路土工−擁壁工指針・改訂原案に準拠したものです。
λは衝突荷重を分布荷重と考えたときの載荷長です。

(質問2)について
P28の図2.8の中やP234からの計算例で使用しているλという文字は,主働すべり面の影響範囲を表していますので,衝突荷重とは全く関係がありません。

p37
pu=P/L
pu :擁壁延長1m当たりの衝突荷重 (kN/m)
P :単位長さ当たりの衝突荷重 (kN/m)
L :擁壁1ブロックの延長 (m)
p241



Q1131 平板載荷試験からの地盤反力係数と極限支持力の算定

礫質土地盤で平板載荷試験を行った結果,下図のような荷重−沈下量曲線が得られました。下記の点についてご教示下さい。

回答



Q1130 もたれ式擁壁が地山に近接するときの土圧計算法

 貴著「擁壁設計Q&A105問答」p114の「質問3.38もたれ式擁壁が地山に近接するときの土圧計算法」に関して下記の点をお教え下さい。
(1)式(5),式(6)のP2,R1の算出方法
(2)P1の作用高はz+(H-z)/3で良いでしょうか。
(3)P2の作用高はH/3とすべきかz/3とすべきかどちらでしょうか。

回答

(1)について
 すべり土塊egbcに作用する力のつり合い式を立てると式(a)となります。未知量はR1とR3だけですので,連立方程式を解けばR1とR3を求めることができます。
 次に土塊ageに着目すると,力のつり合い式が式(b)のように立てられます。R3は式(a)で既知量になっているので,未知量はP2ととR2の2つです。式(b)の連立方程式を解けばP2とP3が求められます。

(2)について
 P1の作用高さはy1=Z+(H-Z)/3です。
(3)について
 擁壁に作用する全土圧P=P1+P2の作用位置をH/3と考えればよいでしょう。

Q1129 地山接近タイプ擁壁の土圧計算

(1)森林土木構造物標準設計では,下図に示すような地山接近タイプにおいて,W1の重量はac'dfのブロックで計算しています。abcdfとして計算するよりも土圧が大きくなるので安全側になります。しかし,abcdfとして計算すべきと思うのですが,いかがでしょう。
(2)下図のようにフーチング部分が折れ曲がっている場合,フーチング部分の高さがどの程度であれば折れ曲がりの影響を考慮して土圧を計算すべきでしょうか。

回答

(1)について
 あまり神経質に考えないのが良いと思います。フーチング部の高さにもよりますが,森林土木構造物標準設計の考え方で良いと思います。土圧計算ではφ=30〜35゜,c=0,δ=2φ/3とした上で,すべり面を直線の折れ線と仮定して土圧を求めてますが,これはかなり大ざっぱな考え方に基づいています。あまり詳細に面積を求めても意味がないように思います。
(2)について
 非常に難しい問題です。まず,どれだけの誤差であれば許容できるのかを判断する統一的な基準がありません。また,土圧の正解値を求める方法がないため誤差を正確に知ることができません。
 私の図書でも,折れ曲がった壁面に作用する土圧計算法を紹介していますが,これはクーロンの土圧理論を応用してすべり面を直線と仮定したもので,どれだけ精度良く土圧を算定できているのか分かっていません。
 以上のような事情で,明快な回答をすることは困難です。

Q1128 「0.3秒60点の世界」の入手方法は

 貴殿が高知新聞の「声ひろば」に投稿されていた「0.3秒60点の世界」という本は,書店で販売されているのでしょうか。入手する方法を教えて下さい。

回答

 一般の書店には置かれていないと思います。
 社団法人全日本建設技術協会に申し込めば郵送してくれるようです。定価は消費税込みで1260円です。

 「0.360点の世界」の申し込み先   「0.3秒60点の世界」からの抜粋(右城猛)

 


Q1127 受働土圧係数

 「新・擁壁の設計法と計算例」に記載のあるクーロンの受働土圧係数Kpについての質問です。
 クーロン式であるにも関わらず,貴著と擁壁工指針,宅地防災マニュアルでは式が異なっています。どの式が正解なのでしょうか?

回答
 「新・擁壁の設計法」と「道路土工−擁壁工指針」とでは,壁面摩擦角δの正負の定義が下図のように異なっています。「新・擁壁の設計法」の式で計算する場合には,例えばδ=10゜のような正の値を用いますが,「道路土工−擁壁工指針」の式で計算する場合にはδ=-10゜のように負の値を用いる必要があります。
 宅地防災マニュアルの式に関しては,印刷ミスではないかと思われます。


Q1126 一軸圧縮強度と許容支持力度の関係

 自由勾配側溝を設置する箇所でスウェーデンサウンディング試験をした結果,一軸圧縮強度はqu=0.43kgf/cm2という値が得られました。この値から支持力を推定する手法をお教え下さい。道路橋示方書の静力学公式を使うべきでしょうか。

回答

道路橋示方書の静力学公式が適用できるのは,拘束圧や排水条件を反映させた3軸圧縮試験でc,φが適切に求められている場合に限られます。
そうでない場合には,下記のような簡便式で推定するのが良いでしょう。当たらずとも遠からずです。
粘性土の一軸圧縮強度をquとすれば,非排水状態の粘着力はcu=qu/2です。
粘性土地盤で基礎の根入れがない場合,帯状基礎の極限支持力度は,qd=cu・Ncと表されます。
Ncは支持力係数です。φ=0のときのNcは,極限状態の破壊面の考え方によって下記のような提案があります。
 チェボタリオフ Nc=6.28,テルツァギーNc=5.71,プランドルNc=5.14(=2+π)
あまり神経質に考えても仕方がないのでNc=6とすれば,qd=6cu=3qu
許容支持力度はqa=qd/3=2cu=quとなります。
スウェーデンサウンディング試験の結果よりqu=0.43kgf/cm2となっていますので,許容支持力度は qa=qu=43kN/m2となります。
ちなみに,道路土工−擁壁工指針 p21の表1-6で,粘性土地盤の許容支持力度qaが,
  非常に堅いもの qa=200kN/m2 qu=200〜400kN.m2
  堅いもの     qa=100kN/m2 qu=100〜200kN.m2
となっているのは,qa=quとしているためだと思われます。

Q1125 土質トラブル回避術と土質力学の教科書でランキン土圧が異なる

 「土質トラブル回避術」p.75, 式(2.34)のランキン土圧式(C>0)で計算するとおかしな値になるのでお尋ねします。
 例えば、φ=15°, c=10kN/m2, q=0kN/m2, γ=15kN/m3, 擁壁高H=10m とした場合,主働土圧係数:KA=0.589、粘着力による自立高さ:zc=1.74mですが,式(2.34)で主働土圧合力PAを算定すると
 PA = 0.5*(10-1.74)*15*(10-1.74)*0.589-2*10*(10-1.74)*√0.589 = 174.7kN/m
となります。しかし,ある土質力学の演習問題どおり計算すると、
擁壁下端での土圧強度pAは、
 pA = 15*10*0.589-2*10*√0.589 = 73.0kN/m2
主働土圧合力PAは、
 PA = 0.5*(10-1.74)*73.0 = 301.5kN/m
となります。
 また、c=20kN/m2として計算すると、式(2.34)ではPA=-12.3kN/m (zc=3.48m)と土圧合力がマイナスになります。
計算方法が間違っているのでしょうか、ご助言をお願いします。

回答

 拙著に印刷ミスがありました。下記の通りですので訂正をお願いします。   


Q1124 重力式擁壁を縦方向に傾斜させたときの滑動安全率

 「土質のトラブル回避術」P219の回答で、ある程度縦断方向に傾斜させても、問題ないようですが、地震時も考慮した土圧に対しては、どのように考えたらいいでしょうか。
 私の現場では、Q39と同じ形状で15%まで傾斜させて既に施工済みであり、問題はありません。事情が許せば、10%くらいが、見た目には自然かも知れません。基礎処理は多少工夫しましたが。

回答
 「土質のトラブル回避術」P219の回答では,常時の滑動の安全率の算定式しか示していませんでした。地震時は次式で計算することができます。

ここに,PEAVは地震時主働土圧の鉛直成分,PEAHは地震時主働土圧の水平成分,kHは設計水平震度です。

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1123 橋台の背後の盛土を部分的に軽量材に置き換えた場合の土圧計算法

 橋台に作用する土圧の軽減を図る目的で,下図に示すように現況の盛土をε=60゜の角度で掘削し,多孔質軽量材に置き換えることを計画しています。この場合,橋台の仮想背面に作用する主働土圧の計算法をご教示下さい。

回答

 試行くさび法を適用して土圧を計算できます。
 式(1)で,すべり角ωを変化させて計算し,PAの最大値を探索すればそれが主働土圧となります。
 W1は下図に示す△abcの範囲の軽量材の重量,W2は△acdの範囲の盛土の重量,Qは楔の上の過載荷重です。
 θは地震の合成角,kHは設計水平震度です。
 常時土圧の計算ではθ=0,δ=φ1,地震時土圧の計算ではQ=0,δ=φ1/2とします。




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Q1122 遮音壁を設置した擁壁の安定計算について

 遮音壁を設置した擁壁の安定計算に関する質問です。

(1) 暴風時の安定計算の安全率は長期or短期?
 道路土工−擁壁工指針には暴風時の安定計算の安全率は明記されていません。部材の許容応力度の割増では地震時および衝突時を1.50,風荷重を考慮する場合を1.25としています。このため,暴風時には安定計算の安全率を短期まで上げていいものか迷っています。

(2) 風荷重と同時に載荷重も作用させるべきか
 道路土工−擁壁工指針(P40)の荷重の組合せによると,暴風時の照査はA「自重+土圧」+風荷重の組合せで行うこととなっています。
 また,A「自重+土圧」は片持ばり式擁壁の場合,仮想背面よりも背面側には載荷重を載荷させることとなっています[土木構造物設計ガイドライン:国土交通省]。
 風荷重時には,下図の右端のように,仮想背面の後方には載荷重を載荷させるべきなのでしょうか。(衝突時も同様のことが言えます)


(3) 擁壁の高さが2m以上であれば暴風時の安定計算は
 道路土工−擁壁工指針(P37)には,下記のことが明記されています。
 @擁壁の頂部に高さ5m以下の遮音壁を直接設ける場合,たて壁の部材設計には遮音壁に作用する風荷重pを考慮するものとし,安定計算には考慮しなくてもよい。
 Aただし,高さが2m以下の重力式擁壁などに直接設置する場合,遮音壁の高さが5m以上となる場合では,風荷重により擁壁の安定が左右され
ることがあるので,風荷重を考慮して行う必要がある。
 擁壁高2.0mで,遮音壁高5.0mであれば風荷重を考慮しなくてよいことになっていますが,下記の例の場合転倒がOUTとう結果になります。本当に安定性を照査しなくても良いのでしょうか。この例の逆T型擁壁には,国土交通省の標準設計図集に掲載されている断面を用いています。

回答

(1)について
 擁壁工指針には暴風時の安定性の安全率が明記されていませんが,高さ2mを超える擁壁については暴風時の安定性の照査が不要と書かれていることから,常時と同じ安全率でないことは確かです。高さ2mの重力式擁壁に対して試計算した結果を下図に示します。常時ではOKです。しかし,風荷重を作用させれば転倒の安全率が1.0を切ります。合力は底面から前方へ外れます。地震時に要求されているFt>1.2,e<B/3の条件も確保されていません。
 このことから,地震時と同程度の安全性が確保されていれば十分であると考えられます。

(2)について
 擁壁工指針には
@自重+載荷重+土圧
A自重+土圧
B自重+地震の影響
と3種類の荷重の組み合わせが示されていますが,正直,私にはこの組み合わせに対して理解ができません。
 土木構造物設計ガイドラインの3-14ページの「図−3.2.4土圧の算定」をご覧下さい。仮想背面の前後で載荷重の矢印の形が変わっています。仮想背面より前の矢印は後から書き足したものです。また,3-15ページの上から3行目に,「ここで,部分載荷時における主働土圧合力として,載荷重を満載した状態の値を用いた。」という変な説明があります。
 載荷重を満載させた場合と,仮想背面の後方だけ載荷させたときの土圧は理論上異なります。部分載荷の土圧を算定しようとすれば,私が提案する「改良試行くさび法」を用いる必要があります。「試行くさび法」では,載荷重が満載の場合の土圧しか計算できません。このため,変な説明になっています。改良試行くさび法を用いて土圧を正しく算定すれば,載荷重を満載する方が擁壁の安定性に不利になります。したがって,Aの組み合わせは不要と思います。

  荷重の組み合わせとしては,下記のように考えた方がよいのではないでしょうか。
 @自重+土圧+載荷重 (常時)
 A自重+土圧+地震の影響 (地震時)
 B自重+土圧+風荷重 (暴風時)
 C自重+土圧+自動車衝突荷重 (自動車衝突時)

(3)について
 擁壁の高さが2m以上であれば,安定性の検討が不要とする理由として,風荷重として最大瞬間風速を対象にしていることが考えられます。動的荷重が作用した場合,滑動の安全率が1.0を下回ればすべり運動を,転倒の安全率1を下回ると回転運動をすることを意味します。荷重の作用時間が短いと,すべり量や回転角は小さいので安定上問題になりません。このようなことから,2mという値が経験的に導き出されたのでないかと推測されます。
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Q1121重力式擁壁で仮想背面を土圧を作用させても良いか 

かかと版のない擁壁では,一般に土圧が壁面に直接作用するものとし,壁面摩擦角をδ=2φ/3として土圧を計算しています。ところが,あるコンサルタントの設計計算では鉛直の仮想背面を設け,壁面摩擦角をδ=0として土圧を計算していました。問題ないのでしょうか。

回答 

 結論から先に言えば,安全側になり問題ないと思います。
 ただし,道路橋示方書下部構造編や道路土工−擁壁工指針では,かかと版の付いていない擁壁についは,土圧作用面を壁面にとることになっています。
 δ=0とすれば,鉛直の仮想壁面に作用する土圧PARはランキン式で求めることができます。壁面に作用する土圧PAWは,仮想背面と壁面には挟まれた土塊の重量Wとランキン土圧PARの合力となりますので,壁面に作用する土圧合力PAWと壁面摩擦角δは下記のように表すことができます。

 φ=30゜の土について,壁面土圧をδ=20゜としてクーロン式で計算した場合と,前述の仮想背面にランキン式を作用させて計算した場合を比較しています。土圧は仮想背面を設けて計算した方が大きくなります。

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Q1120 過載荷重を盛土高さに換算して土圧を計算しても良いか

 過載荷重がある場合の主働土圧を計算する手法として,過載荷重をすべり土塊に加算する方法と,盛土に換算して盛土をがq/γだけ実際よりも高い者として計算する方法があるのですが,どちらが正しいのでしょうか。

回答

 クーロンの土圧公式を用いて計算する場合には,どちらの方法でも答えは同じになります。しかし,試行くさび法で計算した場合には盛土高に換算して計算すると,土塊の重量として下図のW3の部分の重量を余分に見積もることになるため,土圧を大きめに算定することになります。

 

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Q1119 底面に段差が付いた水路の設計計算

 下図の左のような形状をした無筋コンクリート造の水路の設計を地元のコンサルタント会社に依頼したところ,右の図のように2種類の逆L型擁壁と見なして,市販の擁壁計算ソフトを用いて計算してきました。
 滑動に対する安全率は左側の逆L型擁壁が0.86,右側の逆L型擁壁が0.93でいずれも1.5を下回っていました。計算書には「底版の先端には側壁があるため滑動しない」というコメントが付けられていますが,本当に問題ないと言えるのでしょうか。

回答

 無筋コンクリート構造であれば,下図の左のような順序で施工されるので,底版と側壁を一体構造と見なすことはできません。破壊形態は,下図の右のようになるものと考えられます。破壊形態を想定した照査が必要です。逆L型擁壁として計算することはできません。


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Q1118 二段配筋したT型断面の鉄筋コンクリートの応力計算

 あるコンクリート製品の設計計算書で,T型断面をした二段配筋の鉄筋コンクリートの応力計算を下図に示すように行っていました。この断面の曲げモーメントはM=21.5kNmです。このような方法で応力計算しても良いのでしょうか。

回答

 実際には鉄筋は二段に配筋されていますが,コンクリートの圧縮縁からd=94.2mmの位置に一段で配筋されているものと見なし,有効幅b=2,000mmの長方形断面として応力計算をされています。
 中立軸は圧縮縁からx=kd=0.454×94.2=42.8mmの位置にあります。つまり,中立軸が厚さ95mmのフランジの中にあるため,有効幅b=2,000mmの長方形断面として計算しているのは妥当です。
 
 鉄筋の応力度σsをコンクリート圧縮縁からd=94.2mmの位置で計算していますが,実際にはここには鉄筋はありません。鉄筋があるのはd1=65mmの位置とd2=240mmの位置です。鉄筋の応力度は,下記のように計算する必要があります。
 

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Q1117 ガードレール基礎の有効抵抗長の最大は10mと考えるべきか

 車両用防護柵標準仕様・同解説では,ガードレール連続基礎の安定計算に関して「基礎の長さは,基礎の目地間隔を安定計算に用いる一連の長さとして計算するものとするが,基礎の長さが10mより長くなる場合については,10mを最大の長さとして計算を行うものとする」と規定されています。プレキャストコンクリート製のガードレール基礎に対してもこの規定が当てはまるのでしょうか。

回答

 防護柵標準仕様で紹介されている計算例は,断面が長方形の形をした現場打ち無筋コンクリート造の連続基礎です。これに対してプレキャストコンクリート製のガードレール基礎は,L型断面をした鉄筋コンクリート造で,製品長さ2mのものを連結して使用されています(図1参照)。したがって,防護柵標準仕様の規定がそのまま当てはまるとは思えません。
 
 ガードレール連続基礎に衝突荷重が作用すると,基礎の縦方向に図2に示すような曲げモーメントとせん断力が発生します。基礎の縦方向の強度が不足していたり,連結部の継手の強度が不足していると図3のような破壊が考えられます。

 防護柵標準仕様の計算例では応力度の照査が省略されていますが,これは実車を用いた衝突実験等で経験的に安全性が確かめられているためだと思われます。プレキャストコンクリート製品の場合には,標準仕様の計算例とは前述したように条件が異なるためたて方向の曲げモーメントとせん断力に対して部材及び連結部の応力度の照査が必要です。

 防護柵標準仕様の連続基礎は無筋コンクリート造であるので,長さが10mを超えるとコンクリートの曲げ引張応力度が許容値を超えるため10mを限度としているのだと思われます。鉄筋コンクリート造で部材強度が十分あり,連結継手の強度も確保されていれば10mの長さにこだわる必要はないと思います。


      図1 場所打ちコンクリート連続基礎とプレキャストコンクリート基礎



    図2 衝突荷重によっ発生する曲げモーメントとせん断力


          図3 衝突荷重で想定される基礎の破壊形態


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Q1116 仮想背面の後に土がなければ土圧は働かないか

 貴著「擁壁設計Q&A 105問答」のP.105に「質問3.36仮想背面の後に土がなければ土圧は働かないか」の回答は,L型擁壁の背面が構造物という場合に対することになっていますが,構造物が鋼矢板であったとしても,擁壁に作用する土圧の考え方は同じになるでしょうか。 

回答

 鋼矢板であっても同じになると思います。

Q1115 極限支持力度と摩擦係数の出典

 貴著「Excelによる擁壁設計法」のP23に掲載されている表3.4の極限支持力度と摩擦係数ですが,出典先をお教え下さい。

回答
 道路土工-擁壁工指針(H11年)のp21の表1−6,表1−7を参考にしています。
 許容支持力度=極限支持力度/安全率
なので,
 極限支持力度=安全率×許容支持力度
となります。
 常時の安全率は3.0です。表1−6には常時の許容支持力度が示されているので,この表の値を単純に3倍して極限支持力度を求めています。 摩擦係数は表1−7の値をそのまま用いています。

Q1114 擁壁底面を傾斜させたときの滑動安全率

 複合擁壁の安定計算を行ったところ,滑動の安全率が1.27でNGとなりました。支持地盤は岩盤になるのですが、底面に傾斜を付けることはできないのでしょうか。

回答

 支持地盤が岩盤であれば,底面に傾斜を付けても問題はありません。むしろ、滑動の安全率を向上させるので力学的に優れています。
 ただし,底面を傾斜させると,擁壁の壁高が高くなり土圧が増えることになります。土圧が増えるのを防ぐには,図−1に示すように背後の岩盤を床堀りした部分に埋戻しコンクリートを打設する必要があります。
 底面を1:nの勾配(傾斜角θ)で傾斜させたときの滑動の安全率Fsは,式(1)あるいは式(2)で算定することができます。記号は,図−1を参照してください。
 安全側に考えて傾斜部の基礎の重量Wを無視すると,安全率Fsは式(3)で算定できます。fsは底面を水平としたときの滑動安全率です。fs=1.27であれば,底面に1:7の勾配を付けることによって安全率は1.73に増やすことができます。

        図−1

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Q1113 大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルの適用範囲 

 貴著「新・擁壁の設計法と計算例」を見ると、コンクリートもたれ式擁壁でも、大型ブロック積み擁壁でも、地盤係数法によることを推奨されています。
 ところが、「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」の適用範囲は書籍の名称どおりに大型ブロック積みのみで、コンクリートもたれ式擁壁についての記載がありません。「新・擁壁の設計法と計算例」では、コンクリートもたれ式擁壁も大型ブロック積み擁壁も、「もたれ式擁壁」のひとつ(細分類)であるので、コンクリートもたれ式擁壁についても大型ブロック積みと同様な指針類があるとありがたいと思っているところです。
 そこで、コンクリートもたれ式擁壁についての指針類が発行されない、もしくは、「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」で大型ブロック積みに限定している理由があれば教えていただきたくお願いします。

回答
 「間知ブロック積み擁壁」や「大型ブロック積み擁壁」は,背後の地盤にもたれかかって安定する構造であるため,「もたれ式構造」に分類されます。
 もたれ式構造の擁壁は,底面と壁面に発生する地盤反力に支持されて安定します。このため,私は,もたれ式構造については「擁壁」と言うよりも「折れ曲がり基礎」と見なして設計するのが妥当と考えています。
 もたれ式構造の擁壁を重力式擁壁と同様の手法で安定解析すると,荷重の合力が底面のミドルサードから後方へ外れてしまいます。場合によっては,底面そのものから外れてしまうこともあります。このような不合理が起こるのは,壁面土圧を主働土圧と仮定しているためです。つまり壁面土圧を過小に評価しているためです。
 私は,もたれ式構造の擁壁に関しては,壁面には力の釣り合い条件を満たす地盤反力が発生するとし,地盤反力は地盤係数法を適用して算定するのが簡単で合理的と思っています。ところが,道路土工-擁壁工指針で,コンクリートのもたれ式擁壁については重力式擁壁に準拠して安定検討をすることにしています。間知ブロック積み擁壁については,安定検討法が確立されていないという立場から,経験的に定められた標準断面を使用して設計するものとしています。このような事情から,大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルでは,適用範囲を大型ブロック積みに限定しています。私は,いずれは,もたれ式構造の擁壁の全てに地盤係数法が適用される時がくるだろうと思っています。

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